シアワセ職場を創り、社会に貢献します

経営者視点を持って、組織成長に貢献する

久嶋 卓
社会保険労務士法人MRパートナーズ
共同経営者 給与推進課課長
朝比奈 洋介さん
京セラコミュニケーションシステム株式会社
MRパートナーズ担当コンサルタント

私たちの仕事は単純に職場の問題を解決することではなく「組織の成長に貢献すること」です。そのためには、労務だけでなく、経営者の視点が必要です。
「経営者意識をもった人材育成」のために京セラの稲盛和夫名誉会長が考案した経営手法「アメーバ経営」を2015年より導入し、部門別採算制度管理を通じて計数管理や組織マネジメントの経験を積んでいます。この手法を導入することによって、クライアントをサポートするうえでどのような変化があったのでしょうか。京セラコミュニケーションシステムの担当コンサルタント朝比奈さんと、MRパートナーズの経営ボードメンバーが語ります。

「どうしたら人が育つか」
という視点を持てるようになった

「どうしたら人が育つか」<br />
という視点を持てるようになった

久嶋:MRパートナーズは2016年に法人化したのですが、そこでより盤石な組織を築いていくために、2015年より朝比奈さん指導のもと「アメーバ経営」を導入しています。私はそれまでは営業部の一社員だったのですが、法人化のタイミングで代表に誘われて共同経営者となり、代表とともにアメーバ経営の導入・運用のために尽力してきました。

朝比奈:「アメーバ経営」とは、会社を小さな「アメーバ」と呼ばれる組織に細分化して各部門にリーダーを配置し、「ミニ経営者」として組織を運営してもらう手法になります。実は、私がアメーバ経営の導入サポートに入る前からMRパートナーズでは部門別採算制度を取り入れていましたよね。

久嶋:はい。各部門にリーダーを配置して、部門別採算制度はすでに行っていましたが、当時は各部門で単純に「数字を伸ばす」ということにしか意識が向いていなかったように思います。売上や利益といった数字を伸ばすことはもちろん大切なことですが、その前に考えるべきなのは「どうしたら人が育つのか」という視点です。人材の成長なくては組織の成長はあり得ませんし、社員が成長することによって、お客様により大きな価値を提供することができて、結果的に利益につながるからです。メンバーを育てていくために、リーダーができることはなにか。どのような意識で働きかければいいのか。アメーバ経営導入によってこれらが明確になったと思います。

朝比奈:そもそも、なんのためにアメーバ経営を取り入れるのかというと、MRパートナーズが掲げる経営理念「シアワセ職場を創り、社会に貢献する」を実現するためです。この実現のためには、全社員の方々が経営理念を理解して、会社を成長させていこうという思いを持つことが大切です。社員一人ひとりの方の経営者意識を高めるための部門別採算制度であり、経営者意識を持ったリーダーを育てるためのアメーバ経営であるということを理解したうえで、運用していくことが大切だと思っています。

「社内伝票」
でお金の流れを可視化

「社内伝票」<br />
でお金の流れを可視化

久嶋:具体的に何をしていったかというと、まずは社内の各組織はなんのために存在しているのか役割を定義し直しましたよね。わかりやすく言えば、営業はお客様に対して営業活動を行う部門、業務課は実際に手続きを進める部門といったようにそれぞれの組織が担っている役割を明確にして、社内で共有しました。

朝比奈:なぜあらためて各組織の役割を定義したかというと、目的はふたつあります。ひとつは社内の各部門間の関係性を明確にすることによって、リーダーに自部門として求められていることを理解してもらうため。もうひとつは、社内売買の価格を決定するためです。アメーバ経営では、各組織をひとつの「会社」に見立てているため、社内間でサービスの発注・受注があるわけです。リーダー同士がこの価格を決めやすいように、あらためて各アメーバの役割を明確化する必要がありました。

久嶋:それから、社内売買が行われるのでどの部門でも必ず「社内伝票」を書いて、お金の流れが明確になるようにしました。「伝票」といえば一般的に、企業間で会計の取引があったときに必要となるものですが、アメーバ経営ではひとつひとつのアメーバを「会社」と見立てているため、当然、組織間で売買があれば伝票が必要となるわけです。このため、いつ、誰とどのような取引が行われたのか伝票を書き、証拠となる書類をつけて提出しないと実績として反映されないという仕組みを導入したのですが、はじめはかなり大変だった記憶があります(笑)

朝比奈:正しい実績数字を出すために社内伝票は欠かせませんが、慣れないうちは苦労しますよね(笑)

久嶋:ただ、このおかげで数字に対する意識が高まりましたし、評価基準が明確にわかるため、納得感を持って一人ひとりが仕事に取り組めるようになったと思います。

労働の成果が見えるので、
達成感が生まれる

労働の成果が見えるので、<br />
達成感が生まれる

朝比奈:成果が可視化されるというのは、社員の方々の達成感につながりますよね。MRパートナーズの経営理念のひとつは「シアワセ職場の創出」ですが、働く人が幸せを感じる要素のひとつに、「達成感」があると思います。「自分が組織にどう貢献したのかわからないけどお金がもらえた」という状態では達成感が得られないと思うので、自分の行動がどのように成果につながったのか、可視化できるようになったというのは社員の方々のモチベーションにつながっているのではないかと思います。

久嶋:アメーバ経営の導入によって仕組み的な部分で変わったことといえば、「手続き1件あたり何分以内にやろう」といった指標が生まれたことです。それまでは売上などの数字に対する意識はあっても、時間に対してはあまり気にしていませんでした。朝比奈さんにコンサルに入っていただいて、「時間に対してあまりにも無頓着なのでは」といったご指摘をいただいてからは、数字だけでなく効率を意識して、時間当たり採算を上げられるように目標設定ができるようになったと思います。

朝比奈:資料の管理方法なども工夫されていましたよね。

久嶋:はい。複数人で共有する資料や完成した書類など、置き場所の定位置を定めていないと探すのに時間がかかってしまうので、何をどこに置くのか決めるようにしました。細かい部分ではありますが、効率化のためにできることを一つひとつ実行していくことで、6年前と比較すると業務にかかる時間が短縮できているなと思います。

どうしたらメンバーを巻き込むか。
リーダーの意識が変わった

どうしたらメンバーを巻き込むか。<br />
リーダーの意識が変わった

朝比奈:6年前と比較して、確かに社員の方々は変化しているなと思います。各アメーバのリーダーが、自分達が立てた目標をなんとか達成させようという意欲が以前よりも高まったと感じます。期中で、想定よりも数字が出ていなければ、どうすれば目標が達成できるのか考え、リーダーを中心にチーム一丸となって軌道修正していらっしゃいます。

久嶋:以前は、部門別採算制度を取り入れつつもチームとしての動きはほぼなく、リーダーは「最終的に数字を取りまとめる人」といった印象でした。最近では、「メンバーにどう動いてもらうか」「そのために自分はどう働きかければいいのか」といったことにリーダーの意識が向くようになったのでは、と思います。

朝比奈:あとは、リーダーだけでなく社員の方ひとりひとりの数字に対する感覚が高まり、「経営者視点」が身についたことで、クライアントである企業へのサポートの仕方も変わったのではないかと思います。

久嶋:そうですね。企業様から聞かれたことに対して、社労士として法律に基づいて回答するだけでなく、「お客様の組織のどこに問題があるのか」という視点を持って相談対応できるようになったと思います。表面化されていない課題にも気づきやすくなった部分はあると思います。

「フィロソフィ」の理解も
リーダーには欠かせない

「フィロソフィ」の理解も<br />
リーダーには欠かせない

久嶋:6年前からの変化、というと、個人的には「フィロソフィ」が実感を伴って理解できるようになりました。「フィロソフィ」は京セラの稲盛和夫氏の経験則に基づいた企業哲学で、数字面での管理手法であるアメーバ経営とセットで理解していく必要があるものです。アメーバ経営を取り入れると、成果が出ていない部分、組織として弱い部分が明確になってしまいます。経営者として、リーダーとして悩んだときに、フィロソフィがあったからこそ乗り越え、なんとかここまでこれたなと。

朝比奈:実は、私も入社当初は「フィロソフィ」の内容がよくわかりませんでした。少しずつ理解できるようになってきたのは、自分がリーダーになり、チームをまとめるのに苦労した経験を経てから。フィロソフィは稲盛名誉会長が京セラを経営していくなかで、あらゆる困難に遭遇し苦しみながら、その時々で自問自答を繰り返しながらつくりあげてきたもの。理解するのは時間がかかるかもしれませんが、経営をしていくうえで重要なヒントがたくさんあると思います。

久嶋:おっしゃる通りだと思います。フィロソフィの哲学を浸透させていくことは、ひとつ、今後の課題ですね。ここ2年ほどで社員の人数も倍近くなり、組織が大きくなっているので、全員で方向性を確認したり共有したりする機会が減ってしまいました。部門別採算制度を取り入れているとはいえ、やはりMRパートナーズという事務所が⼀体感を持って成長していくために、フィロソフィであり我々の理念を社員一人ひとりが理解することは重要だと思っています。

朝比奈:アメーバ経営は事業の採算を追っていくため、確かにセクショナリズムが生じる恐れがあります。フィロソフィを学びつつMRパートナーズとしてベクトルを合わせ、各部門同士助け合える組織風土を構築してほしいですね。

今後MRパートナーズが
目指す姿とは

今後MRパートナーズが<br />
目指す姿とは

朝比奈:MRパートナーズには、経営理念の実現に向けて邁進できる会社になってほしいと思っています。このためには、全社員の方が経営理念、つまり事業所の存続意義は何かを理解することが大切だと思います。顧客ニーズにのっとり、自分たちが提供できる価値とは何か、これから何をしていく必要があるのかを社員ひとりひとりの方が考えられるようになっていただきたいと思います。そしてリーダーの方には「メンバーの生活は自分が守っている」という自覚を持っていただき、毎日の、毎月の、毎年の採算をシビアに見ていってほしいと思いますし、メンバーはそんなリーダーの気持ちを受け止め、自部門の成長に貢献していっていただきたいですね。このように、経営理念の実現に向けて経営数字をベースに全員で取り組んだ結果、各部⾨の業績が伸び、ひいてはMRパートナーズとして事業成⻑を遂げていってほしいと期待しております。

久嶋:朝比奈さんにコンサルティングに入っていただきつつ我々が学んでいるアメーバ経営の手法やフィロソフィの考え方は、お客様にも還元できるはずだと思っています。お客様企業の情報を見たときに、「もしかしたら人事教育に改善の余地があるのでは」等と気づける視点を持ち、社労士業務だけでなく、プラスαの提案ができるようになりたいと思っています。「シアワセな職場の創出」のために我々ができることはまだまだたくさんあると思うので、経営者視点を一人ひとりが持って提案できるような事務所を目指したいですね。